資料

週刊スパ(発行・扶桑社)2002 10/15
 

増元照明さん

無視され、かわされ、逃げられ、
何もしてくれなかった現実

「以前、社民党なら北朝鮮とのパイプもあるからと、期待し、支持もしていたんです。ところが、拉致事件を取り上げてくれと、誰にメールを出してもなしのつぶて」
 怒りを抑えながら、そう語るのは、姉・るみ子さんを拉致された増元照明さんだ。メールの内訳は、土井たか子氏4通、福島瑞穂氏と辻元清美氏に2通ずつ。他の議員にもメールを出したが、誰からも返事が来なかったという。
「数か月後、議員会館のエレベーターホールでバッタリ土井さんを見かけたんです。そこで『先日メールをお送りした増元ですが』と話しかけると、土井さんは支援者と勘違いしたのか、ニコニコして、『ありがとう』と握手を求めてきたんです」
 ところが、増元さんが拉致被害者の家族だと告げた途端、土井氏の態度は一変。笑顔は消え、無言に。エレベーターが来るとすぐに乗り込み、姿を消してしまったという。
 社民党だけではない。増元さんが「何よりも悔しかった」と語るのは、政府・自民党議員の対応だ。
「98年のテポドン問題のとき、日本はアメリカと歩調を合わせて制裁措置を取りましたよね。その後、拉致事件についても制裁措置を取るよう、当時の河野(洋平)外相にお願いしたんです。すると『制裁は、日米間が協力して行うべき問題で、日本だけ勝手な行動はできない』と何もせずじまいでした」
 拉致事件は、国内の問題ではないのか…。さらに、同じ与党自民党の中山正暉氏の話になると怒りは頂点に達した。
「訪朝団として北朝鮮に行ってから、態度が豹変し、拉致議連の活動をしなくなった。一体、何があったのか…。さすがに、00年に日朝議連の会長にも就任すると、家族会から不満が噴出し、今年、新しく立ち上げた拉致議連から中山氏は外されました」
 だが、祈る被害家族を見て見ぬ振りをしたのは、議員だけではない。法務省人権委員会は「うちで扱う問題ではない」と言い、日本赤十字は「人道ではなく政治の問題」と言い放った。警察庁は「限りなくクロに近いが、現在捜査中」と意味不明なことをのたまい、外務省は「警察庁の頭越しに発表はできない」と、逃げ口上を述べたという。
「困り果てて、国際赤十字に相談すると、『国家同士の紛争ではないから、片方に肩入れはできない。だが、こんな事件が起きているのに、政府や国家機関は何もしないのか?』と不思議がられましたよ」
 外務官僚からは「救う会と一緒にいると解決しない」と、国会議員からは「騒ぎ立てすると殺されるぞ」と脅された。が、そうした経験があるからこそ、増元さんは国の発表より自分自身を信じるのだ。