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北朝鮮 ミサイル発射 2発、軍事力示威か
 

地対艦、60キロ先の日本海に落下

 

【ソウル25日=黒田勝弘】韓国国防省は二十五日、北朝鮮が二十四日午後、日本海に向け短距離の地対艦ミサイルを発射したことを明らかにした。その発射の意図については、米国や日本など国際世論を意識した、北朝鮮に関心を引き付けるための「武力示威」ではないかとする見方が出ている。

 韓国国防省は、今回の北朝鮮のミサイルは国際的に注目されている「テポドン」など長距離弾道ミサイルではないとしており、この発射が新しいミサイルの発射実験なのか、現在、実施中の冬季軍事演習の一環なのかは明らかでなく、ミサイルの種類や距離、発射位置など詳細は分析中としている。

 二十五日付の韓国紙・中央日報は情報筋の話として「地対艦ミサイル一発が北朝鮮・咸鏡南道の東海岸から発射され六十キロの地点に落下したようだ」と伝えた。北朝鮮による海上でのミサイル発射が確認されたのは三年ぶりという。

 韓国と北朝鮮の間では二十日、北朝鮮のミグ戦闘機が一時、韓国の領空を侵犯する事件が起きている。

 北朝鮮では現在、米国による北朝鮮に対する軍事行動を想定して「戦争の危機」が叫ばれ、各種の軍事訓練や反米運動が大々的に展開されている。今回のミサイル発射を含めた最近の軍事動向も、意図的に軍事緊張を高めることで、国民の「士気高揚」と団結を図る狙いからではないかと分析されている。一方、韓国世論は、盧武鉉・新大統領の就任式を迎えて、今のところそれほど関心を示していない。

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 防衛庁は、北朝鮮が発射したミサイルを地対艦ミサイル「シルクワーム(HY−1)」の改良型「AH−40」とみている。発射場所は北朝鮮の咸鏡南道で、午後一時と午後三時の二回発射され、一発目は失敗し、もう一発目は北東に向け約六十キロの日本海上に着弾したという。政府関係者によると、「咸鏡南道の新成里の沖合六十キロ地点に標的をたてて、これをねらった」という。
 また、複数の日本政府関係者は二十五日午前、北朝鮮が二十六日にミサイルを再発射するとの情報があることを明らかにした。

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 ■シルクワーム 旧ソ連の地・艦対艦ミサイルを土台に中国で開発された地対艦ミサイルで、北朝鮮がさらに改良を加えて生産している。射程約80−100キロ、重さ約2トン。艦船攻撃時は低空飛行して命中する。正式名称は海鷹2型。シルクワーム(蚕、silk worm)は、カイコのようなずんぐり形だったことから米国が名づけた。80年代のイラン・イラク戦争でイランが、91年の湾岸戦争でイラク軍が使用。北朝鮮は94年に改良型を発射実験した。
 

[産経新聞 2003年2月25日 東京夕刊]