◆演劇プロデューサー勝呂さん、ロス近郊で説明会
「被害者家族の帰国も決まらず、拉致問題は膠着(こうちゃく)状態。一人の日本人として、アクションを起こさなければ」
北朝鮮による拉致問題で、東京都在住の演劇プロデューサー、勝呂(すぐろ)健さん(三九)が単身渡米し、ロサンゼルス近郊のモントレーパーク市で十二月十五、十六の両日、草の根の協力を呼びかける説明会を開いた。日系人や現地の日本人に交じり、在米朝鮮人も顔を見せた。テレビや新聞をはじめ地元メディアも十社近く集まった。
「子供が不条理に連れ去られ、苦しんでいます。救出に力を貸してください」。訪米前、勝呂さんが撮影した横田めぐみさん=失踪(しっそう)当時(一三)=の両親のビデオメッセージが流れると、参加者は涙し訴えに聞き入った。
もともと、日系人社会を中心に現地では拉致問題への関心は高い。「日本からのニュースを見ていて、同胞として何か協力したかった」。会場内外で八十人以上の署名とメッセージが寄せられた。
質疑応答では、「外交政策を米政府に依存しがちの日本が、この問題をどう解決しようとしているのか」との質問が集中。「米国なら特殊部隊を投入して、すぐに救出した」と拉致問題を長年放置してきた日本政府への批判も相次いだ。
米国人の政財界関係者からは、曽我ひとみさん(四三)の夫で「脱走兵」として米政府に身柄拘束される恐れのあるジェンキンス氏(六二)の帰国問題について、「米政府は事情聴取は行うが、身柄拘束するかどうかは決めていない。それを避けるためには、曽我さんが訪米して米国内の世論を喚起すべきだ」というアドバイスもあった。
「米国にも被害者を心配する人がいることを、炎の温かさで思いだして」。日系二世の女性(八六)は勝呂さんに、「死亡」と伝えられた被害者も含む十三人全員にクリスマスプレゼントとしてキャンドルを託した。
川崎市内の横田さんの自宅には早速、そのキャンドルが飾られた。めぐみさんの母、早紀江さん(六六)は「忙しくてクリスマスは祝えなかったけど、こんなにかわいらしいキャンドルを贈ってもらえて、うれしい」と感謝していたという。
勝呂さんは二月に再び訪米し、モントレー市やロス近郊の数カ所で説明会を行う。米国で支援の輪が広がっていることへの横田夫妻らのお礼のメッセージも携えていく予定だ。(半沢尚久)
[2003年01月07日 産経新聞東京朝刊]
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