2003年家族会訪米を伝える産経新聞記事

   
国連に再調査申し立て決定 日本人拉致事件
[2002年10月29日 東京朝刊]
   
   北朝鮮による日本人拉致事件で、被害者家族会は二十八日、スイス・ジュネーブにある国連人権委員会の「強制的失踪(しつそう)に関する作業部会」に被害者の調査を再び申し立てることを決め、横田滋代表らが政府の中山恭子内閣官房参与と面会して協力を求めた。
 人権委は、国連経済社会理事会の下部機関。昨年四月に横田めぐみさんらの所在確認を求めたが、今年二月、「当該国からの情報が十分でない」として審査は打ち切られた。しかし、北朝鮮側が拉致を認めたことで「再申請による効果が期待できる」(救う会)と、帰国者以外の八人について再申請する。曽我ひとみさんの母、ミヨシさんも新たに加えるよう調整している。
   
   
【主張】国連人権委 今度こそ「拉致」の解明を
[2002年12月07日 東京朝刊]
   
  国連人権委員会の「強制的失踪(しっそう)に関する作業部会」は、北朝鮮に拉致された横田めぐみさんら八人に関する再審査の開始を決定した。今度こそ、国連機関の調査により、真相解明に近づくことを期待したい。
 拉致被害者の家族は昨年四月、同委員会に審査を求めたが、北朝鮮の協力が得られず、いったん審査が打ち切られていた。しかし、今年九月の日朝首脳会談で北朝鮮の金正日総書記が拉致の事実を認めたことにより、今度は外務省の斎木昭隆アジア大洋州局参事官が直接、ジュネーブの同委員会に出向き、再審査を強く要請した。作業部会の専門員は「新たな目で問題を取り上げ、真剣に対応したい」と答えた。毅然とした要請に国連人権委も正面から受け止めたということなのだろう。
 めぐみさんら八人の安否について、北朝鮮は死亡したとする調査結果を示したものの、その証拠として提供した松木薫さんとされる遺骨が別人のものと日本側の鑑定で判明したほか、死因や死亡年月日などについて多くの疑問点が指摘されている。死亡確認書が偽造された疑いもある。これに対し、北朝鮮は何も答えていない。今後は、国連機関も調査に加わる。今までのような不誠実な対応では済まされない。
 本来、このような国連機関への訴えは、日本政府が平成九年に七件十人の拉致被害を認定したときに、外務省が行っておくべきことだった。だが、外務省はほとんど何もしなかった。それどころか、幹部らが「(拉致は)亡命者の証言以外、証拠がない」「たった十人のことで、日朝国交正常化が止まっていいのか」などと発言し、拉致事件を棚上げしようとしていた。
 その間、国際世論に訴えるため、世界を駆けずり回ったのは拉致被害者の家族である。めぐみさんの両親らは米国の新聞に意見広告を出し、米国務省の高官とも会い、ニューヨークの国連本部にも足を運んだ。こうした努力もあって、日朝首脳会談の後、欧米の新聞にも拉致事件が大きく取り上げられるようになったが、まだ世界的に十分な理解が進んだとはいえない。
 これからは、外務省が国際世論を盛り上げるため、今までの不作為を補って余りあるくらいの外交努力をしなければならない。
   
   
国連、拉致非難の決議 総会採択「強制的失踪」を禁止
[2002年12月20日 東京朝刊]
   
   【ニューヨーク19日=内畠嗣雅】国連総会は十八日、政府機関などによる正当な理由のない個人の逮捕、拘禁を許さないとする強制的失踪(しつそう)決議案を無投票(全会一致)で採択した。同決議は二年に一度、採択されているが、今総会での決議には日本政府の働きかけで、北朝鮮と名指しはしないものの、国家による拉致を非難する文言が盛り込まれた。
 また、「いかなる国も強制的失踪を実行し、容認し、許容してはならない」として、国家による拉致を糾弾。拉致事件の調査で各国の努力を求めるとともに、健全な状態での被害者の解放の重要性を確認するとした一節も取り入れた。
   
【ニュースクリック】家族会が訪米検討
[2003年01月21日 東京朝刊]
   
   北朝鮮による拉致被害者家族連絡会事務局長の蓮池透氏は二十日、核開発をめぐる米国と北朝鮮との駆け引きの中で、拉致事件の解決が暗礁に乗り上げていることから、拉致事件の重要性をアピールするため、家族会として米国訪問を検討する考えを明らかにした。今週末に開かれる家族会の会合で具体的に協議する。
 蓮池氏は拉致問題について「(核開発問題の駆け引きが続く中で)どこかへ吹っ飛んでしまう恐れがある」と指摘。米国政府関係者にも拉致事件解決に向け、直接呼び掛けたいという。
   
   
【家族よ】混迷する拉致事件 家族が訪米意向 「拉致事件、理解してほしい」
[2003年01月25日 東京朝刊]
   
  北朝鮮による拉致被害者家族会代表の横田滋さん(七〇)らは二十四日、都内のホテルで安倍晋三官房副長官と面談し、「事件が国家テロであることを米国民に理解してもらいたい」として訪米の意向を明らかにした。
 これに対し安倍副長官は「イラク情勢などもあるのでタイミングをよく考える必要があるが、正式に訪米が決まれば、政府としても支援したい」と述べたが、自らの同行については「考えていない」と否定した。
 訪米時期や訪問先などは未定で、家族会は二十五、二十六の両日に「救う会」(佐藤勝巳会長)などと話し合い、具体化させる方針。
 曽我ひとみさん(四三)=新潟県真野町=が、夫で元米兵のチャールズ・ジェンキンス氏(六二)の家族との面会を強く希望しているため、一緒に訪米することも検討しているほか、三月一日にスイス・ジュネーブで開かれる国連人権委への参加も検討するという。 ◆このままでは…「忘れられてしまう」
 「国際社会に訴えたい」。北朝鮮による拉致被害者の家族会が二十四日、訪米へ向けて動き出した。北朝鮮の核開発問題がクローズアップされ、「このままでは拉致問題が忘れられてしまう…」との思いが根っこにある。
 この日、昼食をとりながら一時間半に及んだ安倍副長官らとの面談後、記者会見した横田滋さんは「時期や国際社会の状況をみて決めることになる。昨年九月以降はあちらでも関心が出てきているので、米国世論の喚起へそれなりの効果はあると思います」と語った。
 蓮池薫さん(四五)の兄で家族会事務局長、透さん(四八)は「米朝間で緊張状態が続いている。仮に米国が譲歩して北朝鮮への支援が行われた場合、拉致問題がかやの外に置かれる可能性がある」と懸念。「訪米して議会や国民に訴えかけたい」と語った。
 家族会の訪米はこれが二度目となる。二年前の平成十三年二−三月、滋さんを団長に、蓮池薫さんの両親ら計七人が約一週間滞在し、国務省の東アジア政策責任者と会見したほか、国連などを訪れ、拉致問題解決への協力を訴えた。しかし当時、米でも拉致問題への関心は低く、ワシントンで記者会見した際も集まったのは日本のメディアばかり。横田早紀江さん(六六)は「いまは拉致問題が大きく出てきて、前とは違った状態でお話しできればいいなと思う」と期待を込める。
 増元るみ子さん=当時(二四)=の弟で家族会事務局次長、照明さん(四七)は「今後、政府関係者と打ち合わせることになるだろう」と話した。
 救う会はこれに先立ち二月二日、幹事二人が渡米し、家族会の訪米について事前調整する。
   
   
拉致被害者家族訪米に向け事前調整へ出発 救う会幹事ら
[2003年02月03日 東京朝刊]
   
   北朝鮮による拉致被害者家族の訪米に先立ち、救う会幹事の島田洋一・福井県立大助教授と福井義高・青山学院大助教授が二日、訪問先との事前調整のため渡米した。
 二人は国務省を訪ね、家族からブッシュ大統領と米国民にあてた書簡を渡す予定。手紙は英文と毛筆の和文の二種で、「米国人の多くの方々とひざを交えて話し、テロ国家・北朝鮮との戦いに向けた互いの決意を新たにしたい」などとつづられている。ワシントンでは、昨年十二月に東京の米国大使館で面会したヘンリー・ハイド下院外交委員長のスタッフも訪問。ニューヨークの国連事務局や同日本代表部も訪れ、九日に帰国する予定だ。
   
   
【家族よ】混迷する拉致問題 「両国で北に制裁を」 救う会幹事、米で訴え
[2003年02月05日 東京朝刊]
   
   【ワシントン4日=古森義久】「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」(救う会)の島田洋一、福井義高両幹事は三日、ワシントンの大手シンクタンクのヘリテージ財団で講演し、日米両国が共同で北朝鮮への経済制裁を検討することなどを訴えた。
 両幹事は拉致事件の解決に向け米国の協力を求めることなどのために二日からワシントンを訪れている。三日は現ブッシュ政権ときずなの深いヘリテージ財団で「北朝鮮のテロリズムの日本人犠牲者」という題で講演した。
 島田氏は「日本人拉致事件はまだ拉致被害者五人の子供たち全員が北朝鮮に人質として身柄を押さえられており、解決にはほど遠い。金正日政権が続く限りは解決は難しく、やはり政権の変更が不可欠だ。そのためには日米共同の経済制裁などを北朝鮮に対して科していくことが重要だ」と述べた。さらに、福井氏は「北朝鮮が日本側の罪のない一般人を拉致してきたことは単にエピソードではなく、北朝鮮の政権の邪悪な本質を表している。日本は北朝鮮の核兵器開発にも深刻な懸念を抱いているが、米側が核問題で北朝鮮と交渉するという譲歩をすると、拉致問題の比重を軽くしてしまう恐れがある。そういう事態はどうしても避けたい」と米側に訴えた。
 「救う会」の代表が米国の大手研究所に招かれ、意見を述べる機会まで与えられたのはこれが初めて。
 今回の訪米はこの先に予定されている拉致された人々の家族の米国訪問の準備も目的としている。
   
   
【家族よ】混迷する拉致問題 米公聴会で証言を希望 地村保さん
[2003年02月12日 東京朝刊]
   
   北朝鮮による拉致被害者、地村保志さん(四七)の父、保さん(七六)が十一日、福井県小浜市役所で会見し、「救う会」幹事の島田洋一・福井県立大助教授らが米国で被害者家族が証言できる米議会公聴会の開催を要請したことに関連し、「日本政府が何もしてくれず、二十四年もの長い間、苦しんできた心境をわたしなりに証言したい」と述べ、「家族会」の一員として訪米し、議会で発言することを希望した。
 保さんは公聴会で「孫が一日も早く帰れるよう米政府と世論に訴えたい」とし、米国の世論の後押しで北朝鮮に圧力をかけてほしいと、あらためて強調した。
 また保さんは、日朝交渉が暗礁に乗り上げ、地村さんの子供の帰国が決まらないことについて「世論が盛り上がった結果、小泉首相が決断して五人が戻った。さらに全国民が拉致について盛り上げてくれれば、首相は日朝交渉を強く進めてくれるだろう」と、首相の手腕に期待を寄せた。
   
   
【家族よ】混迷する拉致問題 蓮池夫妻 帰国4カ月 子供待つ決意新た
[2003年02月15日 東京朝刊]
   
   ◆訪米随行には慎重
 北朝鮮による拉致被害者で、新潟県柏崎市の蓮池薫さん(四五)・祐木子さん(四六)夫妻は帰国後四カ月を前にした十四日、自宅で記者会見した。
 現地に残してきた子供たちについて、薫さんは「“拉致された日本人の子供”とうわさは広まるだろう。だが、うそで固められた経歴(で暮らす)より、日本にいればうそはない」と、一日も早く日本で子供と一緒に暮らしたいという思いをにじませた。祐木子さんも「(永住帰国が)正しい判断だからすぐに応じた」と日本で子供を待つ決意を改めて示した。
 また薫さんは横田めぐみさん=拉致当時(一三)=の夫とされるキム・チョルジュ氏と「八〇年代後半から九〇年代半ばまでの四−五年間、同じ職場だった」とし、「(日本の)雑誌や新聞の切り抜きを翻訳する仕事」に就いていたという。
 帰国に際し、蓮池さん夫妻は「(北朝鮮)当局者から『めぐみさんのことを聞かれたら話してよい』といわれた」と北朝鮮側が積極的にめぐみさんの情報を流すよう促していたことを明らかにした。
 「救う会」や「家族会」の訪米に随行する要請があった場合について、薫さんは「日本でも話したいことが話せないのに、逆効果にならないか。慎重にならざるを得ない」との見解を示した。