離散家族 3回目の再会 北に拉致、大韓航空元スチュワーデスも
[2001年02月27日 東京朝刊]

 【ソウル26日=名村隆寛】朝鮮半島の分断後、南北に離れ離れとなった離散家族の第三回目の再会が二十六日、ソウルと平壌で始まった。今回三日間の日程で行われる離散家族再会には、北朝鮮に拉致(らち)・抑留された人も含まれており、韓国では拉致家族再会の定例化を今後に期待する声も多い。
 この日、再会を果たしたのは昨年の第一回と第二回の離散家族再会時と同じく、南北各百人ずつ。北朝鮮側の訪問団はソウル市内の宿所近くにあるセントラルホテルで、韓国側訪問団は平壌市内の高麗ホテルでそれぞれ家族との再会を果たした。
 中でも注目されたのは平壌で行われた韓国側訪問団の李後徳さん(七七)と娘の成敬姫さん(五五)の三十二年ぶりの再会。成敬姫さんは一九六九年十二月に起こった大韓航空機ハイジャック事件で北朝鮮に拉致・抑留された元スチュワーデスだ。事件直前に搭乗勤務を変更したために偶然、事件に巻き込まれ離散家族になってしまったが、九二年に成敬姫さんが北朝鮮の対南放送に出たことで北での生存が分かった。
 平壌の代表取材団によると、再会の瞬間、「お母さん」と呼びかける娘に、母の李後徳さんは「おまえ、私の娘か?そうなのかい」と言うのが精いっぱい。拉致事件について北朝鮮側が従来から「自ら越北してきたもの」と主張していることなどから微妙な会話はなかったもようだが、事件後に北で生まれ成人した二人の孫にも会い、李後徳さんは感無量の様子。「世界一不幸な母だと思っていたけど、今は世界一幸せな母です」と語っていたという。
 一方、韓国側でも北朝鮮からの訪問団が家族と感激の再会を果たした。前回同様、涙が会場に広がったが、訪問団の中には「金正日花」と呼ばれる赤い花を持ち込み、金正日総書記をたたえる者がいた。また、上着に付けられた数多くの勲章を誇らしく家族に見せ、北朝鮮での生活がいかに恵まれたものであるかを訴える離散家族の姿も見られた。
 南北双方の訪問団は二十七日、個別での再会に臨む。