再検証「新潟少女問題」/ねつ造の経緯


ネタ元は安企部、「現代コリア」が火付け役/キャッチボールし膨らませる

石高記者が仕入れる

 一連の「拉致疑惑」騒ぎの発端となった「新潟少女拉致疑惑」は朝日放送プロデューサーの石高健次記者が「韓国の情報機関の複数の高官」(「諸君!」97年4月号)から仕入れたネタを「現代コリア」が掲載し、それを産経新聞、「アエラ」が転載、一部の議員が国会質問をする形で膨らませてきた。情報機関とは安企部のことだ。

 「現代コリア」グループは「対北朝鮮強硬派 (「噂の真相」97年4月号)。事実、反共和国、反総聯策動に奔走してきた。石高記者の寄稿文という形で「拉致疑惑」を最初に報じたのも「現代コリア」96年10月号(発売は11月)だ。

 その直後、同年12月に「現代コリア」の佐藤勝巳主幹が新潟でのある懇親会で講演した際、この「疑惑」に触れた。ちなみにこの懇親会の参加者は70〜80人で、その中には新潟県警の公安担当者が何人かいたが、佐藤氏はわざわざそのテーブルにいき、めぐみさんの一件を持ち出したという(「宝石」1月号)。

 つまり、石高記者の記事を拡大再生産する役割を果たしたのが佐藤勝巳氏なのだ。

 

偶然にしてはできすぎ

 年が明けて昨年1月23日、新進党(当時)の西村眞悟衆院議員がこの問題と関連して政府に質問主意書を提出する。「現代コリア」の西岡力編集長が「諸君!」97年4月号で語ったところによると、西村議員は「現代コリア」のホームページで「新潟少女」について知ったとされる。

 一方、「宝石」1月号によると、西村議員に資料を提供したのは「現代コリア」研究所研究部長の荒木和博氏。彼は元民社党全国青年部副部長で、「北朝鮮に拉致された日本人を救うための全国協議会」新潟委員会代表の小島晴則氏とも親しい間柄だという。

 西村議員は故西村栄一民社党委員長の子息で旧民社党出身。「北朝鮮在留日本人救援帰還促進議員連盟」(「拉致議連」)にも属しており、昨年2月7日に行われた横田滋氏の記者会見には荒木氏とともに出席者として名を連ねている。このグループが仲間であることがわかる。

 2月3日には産経新聞、読売新聞、「アエラ」(2月10日号)が「拉致疑惑」を一斉に報じ、西村議員が衆議院予算委員会で質問した。

 さらに、テレビ朝日の「ザ・スクープ」(2月8日放映)に顔と名前を伏せた安明進が登場し、「平壌で横田めぐみを見た」と証言する。

 日本電波ニュースの高世仁氏が4日、安にインタビューしたものだが、別の件で安明進へのインタビューを安企部に申し込んだところ、2月4〜5日ならOKということになったという。

 高世氏はインタビューのため3日に東京を出発するが、その日、成田空港のキオスクで購入した産経新聞と「アエラ」を見てびっくりし、安明進に会うやいなや真っ先に横田めぐみの写真を見せたというが、偶然にしてはあまりにもできすぎた話だ。

 

一人歩き始めた「疑惑」

 そして、産経、「アエラ」などの3日の記事と8日の「ザ・スクープ」の証言を補強する形で出てきたのが、3月12日付産経新聞にスクープの形で掲載された安明進へのインタビューだった。

 安企部から提供された情報が「現代コリア」、産経新聞、「アエラ」、一部の政治家などの間でキャッチボールされる形で、実体のないまま膨らみ、それが事実であるかのように一人歩きを始めた構図が見えてくる。

 その結果、昨年4月15日には超党派の議員64人からなる「拉致議連」が結成され、5月1日には日本政府が「新潟少女拉致疑惑」を加えた「7件10人」について「北による犯行の疑いが濃い」と断定するに至るのだ。(聖)

[98/06/30]