難民の地位に関する1951年の条約

(昭和56.10.15 条21)
発効昭和57.1.1(昭和56外告395)


 
〔前文〕
締約国は、
国際連合憲章及び1948年12月10日に国際連合総会により承認された世界人権宣言が、人間は基本的な権利及び自由を差別を受けることなく享有するとの原則を確認していることを考慮し、
国際連合が、種々の機会に難民に対する深い関心を表明し並びに難民に対して基本的な権利及び自由のできる限り広範な行使を保証することに努力してきたことを考慮し、
難民の地位に関する従前の国際協定を修正し及び統合すること並びにこれらの文書の適用範囲及びこれらの文書に定める保護を新たな協定において拡大することが望ましいと考え、
難民に対する庇護の付与が特定の国にとって不当に重い負担となる可能性のあること並びに国際的な広がり及び国際的な性格を有すると国際連合が認める問題についての満足すべき解決は国際協力なしには得ることができないことを考慮し、
すべての国が、難民問題の社会的及び人道的性格を認識して、この問題が国家間の緊張の原因となることを防止するため可能なすべての措置をとることを希望し、
国際連合難民高等弁務官が難民の保護について定める国際条約の適用を監督する任務を有していることに留意し、また各国と国際連合難民高等弁務官との協力により、難民問題を処理するためにとられる措置の効果的な調整が可能となることを認めて、
次のとおり協定した。

第1章 一般規定
第1条【「難民」の定義】

A  この条約の適用上、「難民」とは、次の者をいう。
  (1) 1926年5月12日の取極、1928年6月30日の取極、1933年10月28日の条約、1938年2月10日の条約、1939年9月14日の議定書または国際避難民機関憲章により難民と認められている者。
国際避難民機関がその活動期間中いずれかの者について難民としての要件を満たしていないと決定したことは、当該者が(2)の条件をみたす場合に当該者に対し難民の地位を与えることを妨げるものではない。
  (2) 1951年1月1日前に生じた事件の結果として、かつ、人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができない者またはそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者及びこれらの事件の結果として常居所を有していた国の外にいる無国籍者であって、当該常居所を有していた国に帰ることができない者またはそのような恐怖を有するために当該常居所を有していた国に帰ることを望まない者。
二以上の国籍を有する者の場合には、「国籍国」とは、その者がその国籍を有する国のいずれをもいい、迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するという正当な理由なくいずれか一の国籍国の保護を受けなかったとしても、国籍国の保護がないとは認められない。
B (1) この条約の適用上、Aの「1951年1月1日前に生じた事件」とは、次の事件のいずれかをいう。
(a) 1951年1月1日前に欧州において生じた事件
(b) 1951年1月1日前に欧州または他の地域において生じた事件
各締約国は、署名、批准または加入の際に、この条約に基づく自国の義務を履行するに当たって(a)または(b)のいずれの規定を適用するかを選択する宣言を行う。
  (2) (a)の規定を適用することを選択した国は、いつでも、(b)の規定を適用することを選択する旨を国際連合事務総長に通告することにより、自国の義務を拡大することができる。
C Aの規定に該当する者についてのこの条約の適用は、当該者が次の場合のいずれかに該当する場合には、終止する。
  (1) 任意に国籍国の保護を再び受けている場合
  (2) 国籍を喪失していたが、任意にこれを回復した場合
  (3) 新たな国籍を取得し、かつ、新たな国籍国の保護を受けている場合
  (4) 迫害を受けるおそれがあるという恐怖を有するため、定住していた国を離れまたは定住していた国の外にとどまっていたが、当該定住していた国に任意に再び定住するに至った場合
  (5) 難民であると認められる根拠となった事由が消滅したため、国籍国の保護を受けることを拒むことができなくなった場合
ただし、この(5)の規定は、A(1)の規定に該当する難民であって、国籍国の保護を受けることを拒む理由として過去における迫害に起因するやむを得ない事情を援用することができる者については、適用しない。
  (6) 国籍を有していない場合において、難民であると認められる根拠となった事由が消滅したため、常居所を有していた国に帰ることできるとき。
ただし、この(6)の規定は、A(1)の規定に該当する難民であって、常居所を有していた国に帰ることを拒む理由として過去における迫害に起因するやむをえない事情を援用することができる者については、適用しない。
D この条約は、国際連合難民高等弁務官以外の国際連合の機関の保護または援助を現に受けている者については、適用しない。
これらの保護または援助を現に受けている者の地位に関する問題が国際連合総会の採択する国連決議に従って最終的に解決されることなくこれらの保護または援助の付与が終止したときは、これらの者は、その終止により、この条約により与えられる利益を受ける。
E この条約は、居住国の権限のある機関によりその国の国籍を保持することに伴う権利及び義務と同等の権利を有し及び同等の義務を負うと認められる者については、適用しない。
F この条約は、次のいずれかに該当すると考えられる相当な理由がある者については、適用しない。
  (a) 平和に対する犯罪、戦争犯罪及び人道に対する犯罪に関して規定する国際文書の定めるこれらの犯罪を行ったこと。
  (b) 難民として避難国に入国することが許可される前に避難国の外で重大な犯罪(政治犯罪を除く)を行ったこと。
  (c) 国際連合の目的及び原則に反する行為を行ったこと。

第2条【一般的義務】
すべての難民は、滞在する国に対し、特に、その国の法令を遵守する義務及び公の秩序を維持するための措置に従う義務を負う。

第3条【無差別】
締約国は、難民に対し、人種、宗教または出身国による差別なしにこの条約を適用する。

第4条【宗教】
締約国は、その領域内の難民に対し、宗教を実践する自由及び子の宗教的教育についての自由に関し、自国民に与える待遇と少なくとも同等の好意的待遇を与える。

第5条【この条約にかかわりなく与えられる権利】
この条約のいかなる規定も、締約国がこの条約にかかわりなく難民に与える権利及び利益を害するものと解してはならない。

第6条【「同一の事情のもとで」の意味】
この条約の適用上、「同一の事情のもとで」とは、その性格上難民がみたすことのできない要件を除くほか、ある者が難民でないと仮定した場合に当該者が特定の権利を享受するために満たさなければならない要件(滞在または居住の規則及び条件に関する要件を含む)がみたされていることを条件として、ということを意味する。

第7条【相互主義の適用の免除】
1  締約国は、難民に対し、この条約が一層有利な規定を設けている場合を除くほか、一般に外国人に対して与える待遇と同一の待遇を与える。
2  すべての難民は、いずれかの締約国の領域内に3年間居住した後は、当該締約国の領域内において立法上の相互主義を適用されることはない。
3  締約国は、自国についてこの条約の効力が生ずる日に相互の保証なしに難民に既に認めている権利及び利益が存在する場合には、当該権利及び利益を引き続き与える。
4  締約国は、2及び3の規定により認められる権利及び利益以外の権利及び利益を相互の保証なしに難民に与えることの可能性並びに2に規定する居住の条件をみたしていない難民並びに3に規定する権利及び利益が認められていない難民に対しても相互主義を適用しないことの可能性を好意的に考慮する。
5  2及び3の規定は、第13条、第18条、第19条、第21条及び第22条に規定する権利及び利益並びにこの条約に規定していない権利及び利益のいずれについても、適用する。

第8条【例外的措置の適用の免除】
締約国は、特定の外国の国民の身体、財産または利益に対してとることのある例外的措置については、形式上当該外国の国民である難民に対し、その国籍のみを理由としてこの措置を適用してはならない。前段に定める一般原則を適用することが法制上できない締約国は、適当な場合には、当該難民について当該例外的措置の適用を免除する。

第9条【暫定措置】
この条約のいかなる規定も、締約国が、戦時にまたは他の重大かつ例外的な状況において、特定の個人について国の安全のために不可欠であると認める措置を暫定的にとることを妨げるものではない。もっとも、当該特定の個人について真に難民であるか難民でないかまたは当該特定の個人について当該不可欠であると認める措置を引き続き適用することが国の安全のために必要であるか必要でないかを当該締約国が決定するまでの間に限る。

第10条【居住の継続】
1  第二次世界大戦中に退去を強制されていずれかの締約国の領域に移動させられ、かつ、当該領域内に居住している難民は、この滞在を強制された期間合法的に当該領域内に居住していたものとみなす。
2  難民が第二次世界大戦中にいずれかの締約国の領域からの退去を強制され、かつ、居住のため当該領域にこの条約の効力発生の目前に帰った場合には、この強制された過去の前後の居住期間は、継続的な居住が必要とされるいかなる場合においても継続した一の期間とみなす。

第11条【難民である船員】
締約国は自国を旗国とする船舶の常傭の乗組員として勤務している難民については、自国の領域における定住について好意的考慮を払うものとし、特に他の国における定住を容易にすることを目的として、旅行証明書を発給しまたは自国の領域に一時的に入国を許可することについて好意的考慮を払う。

第2章 法的地位
第12条【属人法】

1  難民については、その属人法は住所を有する国の法律とし、住所を有しないときは、居所を有する国の法律とするものとする。
2  難民が既に取得した権利であって属人法に基づくもの特に婚姻に伴う権利は、難民が締約国の法律に定められる手続に従うことが必要な場合にはこれに従うことを条件として、当該締約国により尊重される。ただし、この権利は、当該難民が難民でないとした場合においても、当該締約国の法律により認められるものでなければならない。

第13条【動産及び不動産】
締約国は、難民に対し、動産及び不動産の所有権並びに動産及び不動産についてのその他の権利の取得並びに動産及び不動産に関する賃貸借その他の契約に関し、できる限り有利な待遇を与えるものとし、いかなる場合にも、同一の事情のもとで一般に外国人に対して与える待遇よりも不利でない待遇を与える。

第14条【著作権及び工業所有権】
難民は、発明、意匠、商標、商号等の工業所有権の保護並びに文学的、美術的及び学術的著作物についての権利の保護に関しては、常居所を有する国において、その国の国民に与えられる保護と同一の保護を与えられるものとし、他のいずれの締約国の領域においても、当該難民が常居所を有する国の国民に対して当該締約国の領域において与えられる保護と同一の保護を与えられる。

第15条【結社の権利】
締約国は、合法的にその領域内に滞在する難民に対し、非政治的かつ非営利的な団体及び労働組合にかかわる事項に関し、同一の事情のもとで外国の国民に与える待遇のうち最も有利な待遇を与える。
 
第16条【裁判を受ける権利】
1  難民は、すべての締約国の領域において、自由に裁判を受ける権利を有する。
2  難民は、常居所を有する締約国において、裁判を受ける権利に関する事項(法律扶助及び訴訟費用の担保の免除を含む)につき、当該締約国の国民に与えられる待遇と同一の待遇を与えられる。
3  難民は、常居所を有する締約国以外の締約国において、2に規定する事項につき、当該常居所を有する締約国の国民に与えられる待遇と同一の待遇を与えられる。

第3章 職業
第17条【賃金が支払われる職業】

1  締約国は、合法的にその領域内に滞在する難民に対し、賃金が支払われる職業に従事する権利に関し、同一の事情のもとで外国の国民に与える待遇のうち最も有利な待遇を与える。
2  いかなる場合にも、締約国が国内労働市場の保護のため外国人または外国人の雇用に関してとる制限的措置は、当該締約国についてこの条約の効力が生ずる日に既にそれらの措置の適用を免除されている難民または次の条件のいずれかをみたす難民については、適用しない。
  (a) 当該締約国に3年以上居住していること。
  (b) 当該難民が居住している当該締約国の国籍を有する配偶者があること。難民は、その配偶者を遺棄した場合には、この(b)の規定による利益を受けることができない。
  (c) 当該難民が居住している当該締約国の国籍を有する子があること。
3  締約国は、賃金が支払われる職業に関し、すべての難民、特に、労働者募集計画または移住者受入計画によって当該締約国の領域に入国した難民の権利を自国民の権利と同一のものとすることについて好意的考慮を払う。

第18条【自営業】
締約国は、合法的にその領域内にいる難民に対し、独立して農業、工業、手工業及び商業に従事する権利並びに商業上及び産業上の会社を設立する権利に関し、できる限り有利な待遇を与えるものとし、いかなる場合にも、同一の事情のもとで一般に外国人に対して与える待遇よりも不利でない待遇を与える。

第19条【自由業】
1  締約国は、合法的にその領域内に滞在する難民であって、当該締約国の権限のある機関が承認した資格証書を有し、かつ、自由業に従事することを希望するものに対し、できる限り有利な待遇を与えるものとし、いかなる場合にも、同一の事情のもとで一般に外国人に対して与える待遇よりも不利でない待遇を与える。
2  締約国は、自国が国際関係について責任を有する領域(本土地域を除く)内に1に規定する難民が定住することを確保するため、自国の憲法及び法律に従って最善の努力を払う。

第4章 福祉
第20条【配給】

難民は、供給が不足する物資の分配を規制する配給制度であって住民全体に適用されるものが存在する場合には、当該配給制度の適用につき、国民に与えられる待遇と同一の待遇を与えられる。

第21条【住居】
締約国は、住居にかかわる事項が法令の規制を受けまたは公の機関の管理のもとにある場合には、合法的にその領域内に滞在する難民に対し、住居に関し、できる限り有利な待遇を与えるものとし、いかなる場合にも、同一の事情のもとで一般に外国人に対して与える待遇よりも不利でない待遇を与える。

第22条【公の教育】
1  締約国は、難民に対し、初等教育に関し、自国民に与える待遇と同一の待遇を与える。
2  締約国は、難民に対し、初等教育以外の教育、特に修学の機会、学業に関する証明書、資格証書及び学位の外国において与えられたものの承認、授業料その他納付金の減免並びに奨学金の給付に関し、できる限り有利な待遇を与えるものとし、いかなる場合にも、同一の事情のもとで一般に外国人に対して与える待遇よりも不利でない待遇を与える。

第23条【公的扶助】
締約国は、合法的にその領域内に滞在する難民に対し、公的扶助及び公的援助に関し、自国民に与える待遇と同一の待遇を与える。

第24条【労働法制及び社会保障】

1  締約国は、合法的にその領域内に滞在する難民に対し、次の事項に関し、自国民に与える待遇と同一の待遇を与える。
  (a) 報酬(家族手当がその一部を成すときは、これを含む)、労働時間、時間外労働、有給休暇、家内労働についての制限、雇用についての最低年齢、見習及び訓練、女子及び年少者の労働並びに団体交渉の利益の享受にかかわる事項であって、法令の規律を受けるものまたは行政機関の管理のもとにあるもの。
  (b) 社会保障(業務災害、職業病、母性、疾病、廃疾、老齢、死亡、失業、家族的責任その他国内法令により社会保障制度の対象とされている給付事由に関する法規)。ただし、次の措置をとることを妨げるものではない。
(�@) 当該難民が取得した権利または取得の過程にあった権利の維持に関し適当な措置をとること。
(�A) 当該難民が居住している当該締約国の国内法令において、公の資金から全額支給される給付の全部または一部に関し及び通常の年金の受給のために必要な拠出についての条件を満たしていない者に支給される手当てに関し、特別の措置を定めること。
2  業務災害または職業病に起因する難民の死亡について補償を受ける権利は、この権利を取得する者が締約国の領域外に居住していることにより影響を受けない。
3  締約国は、取得されたまたは取得の過程にあった社会保障についての権利の維持に関し他の締約国との間で既に締結した協定または将来締結することのある協定の署名国の国民に適用される条件を難民がみたしている限り、当該協定による利益と同一の利益を当該難民に与える。
4  締約国は、取得されたまたは取得の過程にあった社会保障についての権利の維持に関する協定であって非締約国との間で現在効力を有しまたは将来効力を有することのあるものによる権利と同一の利益をできる限り難民に与えることについて好意的考慮を払うものとする。

第5章 行政上の措置
第25条【行政上の援助】

1  難民がその権利の行使につき通常外国の機関の援助を必要とする場合において当該外国の機関の援助を求めることができないときは、当該難民が居住している締約国は、自国の機関または国際機関により同様の援助が当該難民に与えられるように取り計らう。
2  1にいう自国の機関または国際機関は、難民に対し、外国人が通常本国の機関からまたは本国の機関を通じて交付を受ける文書または証明書と同様の文書または証明書を交付するものとし、また、その監督のもとにこれらの文書または証明書が交付されるようにする。
3  2の規定により交付される文書または証明書は、外国人が本国の機関からまたは本国の機関を通じて交付を受ける公文書に代わるものとし、反証のない限り信用が与えられるものとする。
4  生活に困窮する者に対する例外的な取扱いがある場合には、これに従うことを条件として、この条に規定する事務については手数料を徴収することができるが、その手数料は、妥当な、かつ、同種の事務について国民から徴収する手数料に相応するものでなければならない。
5  この条の規定は、第27条及び第28条の規定の適用を妨げるものではない。

第26条【移動の自由】
締約国は、合法的にその領域内にいる難民に対し、当該難民が同一の事情のもとで一般に外国人に対して適用される規制に従うことを条件として、居住地を選択する権利及び当該締約国の領域内を自由に移動する権利を与える。

第27条【身分証明書】
締約国は、その領域内にいる難民であって有効な旅行証明書を所持していない者に対し、身分証明書を発給する。

 第28条【旅行証明書】
1  締約国は、合法的にその領域内に滞在する難民に対し、国の安全または公の秩序のためのやむをえない理由がある場合を除くほか、その領域外への旅行のための旅行証明書を発給するものとし、この旅行証明書に関しては、附属書の規定が適用される。締約国は、その領域内にいる他の難民に対してもこの旅行証明書を発給することができるものとし、特に、その領域内にいる難民であって合法的に居住している国から旅行証明書の発給を受けることができない者に対して旅行証明書を発給することについて好意的考慮を払う。
2  従前の国際協定の締約国が当該国際協定の定めるところにより難民に対して発給した旅行証明書は、この条約の締約国により有効なものとして認められ、かつ、この条の規定により発給されたものとして取り扱われる。

第29条【公租公課】
1  締約国は、難民に対し、同様の状態にある自国民に課しているもしくは課することのある租税その他の公課(名称のいかんを問わない)以外の公課を課してはならず、また、租税その他の公課(名称のいかんを問わない)につき同様の状態にある自国民に課する額よりも高額のものを課してはならない。
2  1の規定は、行政機関が外国人に対して発給する文書(身分証明書を含む)の発給についての手数料に関する法令を難民について適用することを妨げるものではない。

第30条【資産の移転】
1  締約国は、自国の法令に従い、難民がその領域内に持ち込んだ資産を定住のために入国を許可された他の国に移転することを許可する。
2  締約国は、難民が入国を許可された他の国において定住するために必要となる資産(所在地のいかんを問わない)につき当該難民から当該資産の移転の許可の申請があった場合には、この申請に対し好意的考慮を払う。

第31条【避難国に不法にいる難民】
1  締約国は、その生命または自由が第1条の意味において脅威にさらされていた領域から直接来た難民であって許可なく当該締約国の領域に入国しまたは許可なく当該締約国の領域内にいるものに対し、不法に入国しまたは不法にいることを理由として刑罰を科してはならない。ただし、当該難民が遅滞なく当局に出頭し、かつ、不法に入国しまたは不法にいることの相当な理由を示すことを条件とする。
2  締約国は、1の規定に該当する難民の移動に対し、必要な制限以外の制限を課してはならず、また、この制限は、当該難民の当該締約国における滞在が合法的なものとなるまでの間または当該難民が他の国への入国許可を得るまでの間に限って課することができる。締約国は、1の規定に該当する難民に対し、他の国への入国許可を得るために妥当と認められる期間の猶予及びこのために必要なすべての便宜を与える。

第32条【追放】
1  締約国は、国の安全または公の秩序を理由とする場合を除くほか、合法的にその領域内にいる難民を追放してはならない。
2  1の規定による難民の追放は、法律の定める手続に従って行われた決定によってのみ行う。国の安全のためのやむを得ない理由がある場合を除くほか、1に規定する難民は、追放される理由がないことを明らかにする証拠の提出並びに権限のある機関またはその機関が特に指名する者に対する不服の申立て及びこのための代理人の出頭を認められる。
3  締約国は、1の規定により追放されることとなる難民に対し、他の国への入国許可を求めるのに妥当と認められる期間の猶予を与える。締約国は、この期間中必要と認める国内措置をとることができる。

第33条【追放及び送還の禁止】
1  締約国は、難民を、いかなる方法によっても、人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見のためにその生命または自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ追放しまたは送還してはならない。
2  締約国にいる難民であって、当該締約国の安全にとって危険であると認めるに足りる相当な理由がある者または特に重大な犯罪について有罪の判決が確定し当該締約国の社会にとって危険な存在となった者は、1の規定による利益の享受を要求することができない。

第34条【帰化】
締約国は、難民の当該締約国の社会への適応及び帰化をできる限り容易なものとする。締約国は、特に、帰化の手続が迅速に行われるようにするため並びにこの手続にかかる手数料及び費用をできる限り軽減するため、あらゆる努力を払う。

第6章 実施規定及び経過規定
第35条【締約国の機関と国際連合との協力】

1  締約国は、国際連合難民高等弁務官事務所またはこれを承継する国際連合の他の機関の任務の遂行に際し、これらの機関と協力することを約束するものとし、特に、これらの機関の条約の適用を監督する責務の遂行に際し、これらの機関に便宜を与える。
2  締約国は、国際連合難民高等弁務官事務所またはこれを承継する国際連合の他の機関が国際連合の権限のある機関に報告することのできるよう、要請に応じ、次の事項に関する情報及び統計を適当な様式で提供することを約束する。
  (a) 難民の状態
  (b) この条約の実施状況
  (c) 難民に関する現行法令及び難民に関して将来施行される法令

第36条【国内法令に関する情報】
締約国は、国際連合事務総長に対し、この条約の適用を確保するために制定する法令を送付する。

第37条【従前の条約との関係】
この条約は、締約国の間において、1922年7月5日、1924年5月31日、1926年5月12日、1928年6月30日及び1935年7月30日の取極、1933年10月28日及び1938年2月10日の条約、1939年9月14日の議定書並びに1946年10月15日の協定に代わるものとする。ただし、第28条の2の規定の適用を妨げない。

第7章 最終条項
第38条【紛争の解決】

この条約の解釈または適用に関する締約国間の紛争であって他の方法によって解決することができないものは、いずれかの紛争当事国の要請により、国際司法裁判所に付託する。

第39条【署名、批准及び加入】
1  この条約は、1951年7月28日にジュネーブにおいて署名のために開放するものとし、その後国際連合事務総長に寄託する。この条約は、同日から同年8月31日までは国際連合の欧州事務所において、同年9月17日から1952年12月31日までは国際連合本部において、署名のために開放しておく。
2  この条約は、国際連合のすべての加盟国並びにこれらの加盟国以外の国であって難民及び無国籍者の地位に関する全権委員会議に出席するよう招請された者並びに国際連合総会によりこの条約に署名するよう招請される者による署名のために開放しておく。この条約は、右の国により批准されなければならない。批准書は、国際連合事務総長に寄託する。
3  この条約は、1951年7月28日から2に規定する国による加入のために開放しておく。加入は、加入書を国際連合事務総長に寄託することによって行う。

第40条【適用地域条約】
1  いずれの国も、署名、批准、または加入の際に、自国が国際関係について責任を有する領域の全域または一部についてこの条約を適用することを宣言することができる。宣言は、その国についてこの条約の効力が生ずる時に効力を生ずる。
2  いずれの国も、署名、批准または加入の後1の宣言を行う場合には、国際連合事務総長にその宣言を通告するものとし、当該宣言は、国際連合事務総長が当該宣言の通告を受領した日の後90日またはその国についてこの条約の効力が生ずる日のいずれか遅い日に効力を生ずる。
3  関係国は、署名、批准または加入の際にこの条約を適用することをしなかった領域についてこの条約を適用するため、憲法上必要があるときはこれらの領域の政府の同意を得ることを条件として必要な措置をとることの可能性について検討する。

第41条【連邦条項】
締約国が連邦制または非単一制の国である場合には、次の規定を適用する。

(a) この条約の規定であってその実施が連邦の立法機関の立法権の範囲内にあるものについては、連邦の政府の義務は、連邦制をとっていない締約国の義務と同一とする。
(b) この条約の規定であってその実施が邦、州または県の立法権の範囲内にあり、かつ連邦の憲法制度上、邦、州または県が立法措置を取ることを義務づけられていないものについては、連邦の政府は、邦、州または県の適当な機関に対し、できる限り速やかに、好意的な意見を付してその規定を通報する。
(c) この条約の締約国である連邦制の国は、国際連合事務総長を通じて他の締約国から要請があったときは、この条約の規定の実施に関する連邦及びその構成単位の法令及び慣行についての説明を提示し、かつ、立法その他の措置によりこの条約の規定の実施が行われている程度を示す。

第42条【留保】
1  いずれの国も、署名、批准または加入の際に、第1条、第3条、第4条、第16条1、第33条及び第36条から第46条までの規定を除くほか、この条約の規定について留保を付することができる。
2  1の規定に基づいて留保を付した国は、国際連合事務総長にあてた通告により、いつでも当該留保を撤回することができる。

第43条【効力発生】
1  この条約は、6番目の批准書または加入書が寄託された日の後90日目の日に効力を生ずる。
2  この条約は、6番目の批准書または加入書が寄託された後に批准しまたは加入する国については、その批准書または加入書が寄託された日の後90日目の日に効力を生ずる。

第44条【廃棄】
1  いずれの締約国も、国際連合事務総長にあてた通告により、いつでもこの条約を廃棄することができる。
2  廃棄は、国際連合事務総長が1の通告を受領した日の後1年で当該通告を行った締約国について効力を生ずる。
3  第40条の規定に基づいて宣言または通告を行った国は、その後いつでも、国際連合事務総長にあてた通告により、同条の規定に基づく宣言または通告により指定した領域についてこの条約の適用を終止する旨の宣言を行うことができる。当該宣言は、国際連合事務総長がこれを受領した日の後1年で効力を生ずる。

第45条【改正】
1  いずれの締約国も、国際連合事務総長にあてた通告により、いつでもこの条約の改正を要請することができる。
2  国際連合総会は、1の要請についてとるべき措置があるときは、その措置を勧告する。

第46条【国際連合事務総長による通報】
国際連合事務総長は、国際連合のすべての加盟国及びこれらの加盟国以外の国で第39条に規定するものに対し、次の事項を通報する。
(a) 第1条Bの規定による宣言及び通告
(b) 第39条の規定による署名、批准及び加入
(c) 第40条の規定による宣言及び通告
(d) 第42条の規定による留保及びその撤回
(e) 第43条の規定に基づきこの条約の効力が生ずる日
(f) 第44条の規定による廃棄及び通告
(g) 前条の規定による改正の要請
以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの条約に署名した。
1951年7月28日にジュネーブで、ひとしく正文である英語及びフランス語により本書1通を作成した。本書は、国際連合に寄託するものとし、その認証謄本は、国際連合のすべての加盟国及びこれらの加盟国以外の国で第39条に規定するものに送付する。



〔附属書〕
第1項

1  第28条に規定する旅行証明書の様式は、付録に定める様式と同様のものとする。
2  1の旅行証明書は、少なくとも二の言語で作成するものとし、そのうちの一の言語は、英語又はフランス語とする。

第2項
旅行証明書の発給国の規則に別段の定めがある場合を除くほか、子は、両親のいずれか一方の旅行証明書にまたは例外的な事情のある場合には成人である他の難民の旅行証明書に併記することができる。

第3項
旅行証明書の発給について徴収する手数料の額は、国民に対する旅券の発給についての手数料の最低額を超えてはならない。

第4項
特別の場合または例外的な場合を除くほか、旅行証明書は、できる限り多数の国について有効なものとして発給する。

第5項
旅行証明書の有効期間は、その発給機関の裁量により1年または2年とする。

第6項
1  旅行証明書の有効期間の更新または延長は、当該旅行証明書の名義人が合法的に他の国の領域内に居住するに至っておらず、かつ、当該旅行証明書の発給機関のある国の領域内に合法的に居住している限り、当該発給機関の権限に属する。新たな旅行証明書の発給は、前段の条件と同一の条件がみたされる限り、従前の旅行証明書の発給機関の権限に属する。
2  外交機関または領事機関で特にその権限を与えられているものは、自国の政府が発給した旅行証明書の有効期間を6カ月を超えない範囲で延長する権限を有する。
3  締約国は、既にその領域内に合法的に居住していない難民であって合法的に居住している国から旅行証明書を取得することができないものに対し、旅行証明書の有効期間の更新もしくは延長または新たな旅行証明書の発給について好意的考慮を払う。

第7項
締約国は、第28条の規定により発給された旅行証明書を有効なものとして認める。

第8項
難民が赴くことを希望する国の権威のある機関は、当該難民の入国を認める用意があり、かつ、当該難民の入国に査証が必要であるときは、当該難民の旅行証明書に査証を与える。

第9項
1  締約国は、最終の目的地である領域の査証を取得している難民に対し、通過査証を発給することを約束する。
2  1の通過査証の発給は、一般に外国人に対して査証の発給を拒むことのできる正当な事由によって拒むことができる。

第10項
出国査証、入国査証または通過査証の発給についての手数料の額は、外国の旅券に査証を与える場合の手数料の最低額を超えてはならない。

第11項
いずれかの締約国から旅行証明書の発給を受けていた難民が他の締約国の領域内に合法的に居住するに至ったときは、新たな旅行証明書を発給する責任は、第28条の規定により当該他の締約国の領域の権限のある機関が負うものとし、当該難民は、当該機関に旅行証明書の発給を申請することができる。

第12項
新たな旅行証明書の発給機関は、従前の旅行証明書を回収するものとし、当該従前の旅行証明書にこれを発給国に返送しなければならない旨の記載があるときは、当該従前の旅行証明書を当該発給国に返送する。そのような記載がないときは、当該発給機関は、回収した旅行証明書を無効なものとする。

第13項
1  締約国は、第28条の規定により発給した旅行証明書の名義人に対し、その旅行証明書の有効規則内のいずれの時点においても当該締約国の領域に戻ることを許可することを約束する。
2  締約国は、1の規定に従うことを条件として、旅行証明書の名義人に対し、出入国について定める手続に従うことを要求することができる。
3  締約国は、例外的な場合または難民の滞在が一定の期間に限って許可されている場合は、難民が当該締約国の領域に戻ることのできる期間を旅行証明書の発給の際に3カ月を下らない期間に限定することができる。

第14項
前項の規定のみを例外として、この附属書の規定は、締約国の領域にかかわる入国、通過、滞在、定住及び出国の条件を規律する法令に何ら影響を及ぼすものではない。

第15項
旅行証明書の発給があったこと及び旅行証明書に記入がされていることは、その名義人の地位(特に国籍)を決定しまたはこれに影響を及ぼすものではない。

第16項
旅行証明書の発給は、その名義人に対し、当該旅行証明書の発給国の外交機関または領事機関による保護を受ける権利をいかなる意味においても与えるものではなく、また、これらの機関に対し、保護の権利を与えるものでもない。


 

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